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実践!ChatGPT×Slackの具体的な連携方法と日常業務での効果的な活用事例

目次

こんにちは、調和技研 研究開発部の高松です。

ChatGPTの登場に伴い、当社ではOpenAI社のChatGPT Plus(有料版)の利用料を補助することで全社員への導入を推進しつつ、実業務での効果的な活用方法を探ってきました。今回から数回に分けて、ChatGPTの社内活用を促進するための具体的な適用事例をご紹介していきます。その第一弾となる本記事では、調和技研で導入しているSlack×ChatGPTの実例を取り上げます。

ChatGPTの日常業務への統合

AI技術の進歩により、ChatGPTのような大規模言語モデル(LLM)は我々の働き方を大きく変える可能性があります。しかしご存じの通り、Web版のChatGPTに業務情報を入力することにはリスクが伴います。そのデータがGPTの学習に利用される可能性があるためです。オプトアウト機能や履歴保持をさせない機能も追加されましたが、ユーザ操作が必要なため、安全性には不安が残ります。

そのため当社では、ChatGPTのWeb版では業務情報を入力しない方針で活用してきました。しかし、これでは業務へのシームレスな統合は実現できません。そこでMicrosoft社が提供する「Azure OpenAI Service」を導入し、システム化を進めることにしました。

また利用形態として、当社社員全員が使い慣れているSlackをインターフェースとして採用しています。これにより、日々の業務の中でChatGPTをSlackから直接利用することが容易になり、よりスムーズな利用促進が実現できるようになりました。

具体的なシステム構成

当社のシステムはAzure OpenAI ServiceとSlackの組み合わせで構成されています。

えらくシンプルですね。Azure(青枠)内の空白は・・・今後の連載で明かされていくことでしょう。

SlackとOpenAI Serviceとの連携部分は、Azure Functionsというサービスを用いて実現しています。サーバレスAPIを実現するためのサービスで、AWSではLambdaに相当します。

それぞれについて、もう少し詳しく解説します。

Azure OpenAI Service

Azure OpenAI ServiceはOpenAI社と同等のサービスで、SLAが適用され、セキュリティポリシーが明確です。また、Azure側で30日間のログを暗号化して保持しますが、学習には用いないというポリシーがあります。現状、最新のモデルの反映などはOpenAI 本体のAPIの方が早いですが、課金などの仕組みなどを合わせて考えると、業務利用にはAzure OpenAI Serviceの方が適しています。

Azure Functions

Azure Functionsは、本システムの中心部分です。Slack上でChatGPT Appがメンションされた場合、イベントの配送先として本Functionが呼び出されます。このメンションされたメッセージをOpenAI Serviceに渡す役割を果たします。また、文脈を用いた対話ができるように、メンションされたメッセージのスレッドを取得し、それらを含めてGPTにコンテキストとして与えています。

Slack App

Slackへの接続はSlack Appという仕組みを使います。いくつか方法がありますが、今回は、人間のように話しかけることができるスタイルのアプリになっています。アプリとしては、指定したイベントをAzure Functionsに転送する形で実現しています。設定方法の詳細についてはSlack でのアプリ使用ガイドやその他の導入記事が多数ありますので、本記事では割愛します。

当社でのリアルな利用実績とその効果

1. Slack上で対話

ChatGPTが世間に急速に受け入れられた理由の一つは、利用形態が自然な対話形式であることでしょう。ユーザーが最初に完璧な指示を与えることは難しいですが、人間に話すように追加の指示を与えていくことで結果を改善することができます。また、アイデアをブラッシュアップするための壁打ち相手といった使い方も、とても有効です。

今回構築した仕組みでは、Slackの会話スレッドの履歴を取得しコンテキストとして与えることで、ChatGPT Web版同様の対話形式での利用を可能にしています。例えば、社員同士がSlack上で何往復もやりとりした対話の内容を瞬時に要約してもらうことなども可能です。このように、普段の業務の中で自然にGPTを呼び出して利用できる環境を構築できています。

また、チャンネル毎にChatGPTに役割をもたせ、利用する方法も探っています。以下は、アイデア出しのチャンネルにおけるシステムメッセージ(ChatGPTの役割などを指定するプロンプト)とその利用例です。

2. コード生成

ChatGPTはコード生成にも利用できます。Pandasなどの主要なライブラリは(新しい機能でなければ)概ね利用方法を知っており、リクエストに対して正しいソースコードを出してくれますので、リファレンスを参照する代わりにサンプルコードを書いてもらう場合などには向いていると思います。一度では希望の形にならなくても、追加で指示を与えることで書き直しもしてくれます。

ただし、本格的なコーディングをするときは、(Slackとの行ったり来たりは大変なので)GitHub Copilotのような密接に連携できるツールの方が使い勝手が良いです。言語モデルを用いたコード生成に関する話題は、別の回でご説明したいと思います。以下は、コード生成の例です。

3. 一番利用されているのは○○

社内で一番利用されているのは、実はシンプルに翻訳です。当社には子会社があるバングラディシュをはじめ、英国、ジャマイカなど様々な国から来たメンバーが在籍しています。このため、普段のSlackのやりとりにも日本語と英語が入り乱れており、私のように英語が堪能ではないメンバーにとっては機械翻訳が必須。SlackにChatGPTがいると、”@ChatGPT to Japanese”とメッセージを送るだけで、即座に日本語に翻訳してもらえます。翻訳専門ツールであるDeepLなどの方が精度は良いかもしれませんが、ツールをまたがずに使えることは非常に便利で、社内のコミュニケーションをスムーズにしてくれています。ちなみに、"@ChatGPT -en"ぐらいまで切り詰めてもGPTは意図を汲んでくれます。かしこい。

プロの支援を受けて”適切に”ChatGPTを活用しよう

以上、調和技研におけるChatGPTの導入とその利用例をご紹介しました。ぜひ参考にしていただけたら幸いです。

ChatGPTは私たちの働き方を変える便利なツールであることは間違いありませんが、企業で活用するには注意すべき点がいくつかあります。調和技研では、ChatGPT導入のベストプラクティス、社内の規約整備、従業員に如何に使ってもらうか、といった教育を含めて、導入支援のコンサルなどもお手伝いできますので、ご興味がある方はご連絡いただければと思います。

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記事を書いた人
高松 一樹

研究開発部 部長。言語系AIとプロダクトを管轄。2001年に当社の母体である北海道大学 調和系研究室を卒業(修士)。B2Bミドルウェアの開発、通信関連の研究開発を経て、AI研究が再度の盛り上がりを見せてきた2019年1月、調和技研に参加。大きなうねりの中にあるAI業界に身を置くことができて、毎日スリリングです。